秋色桜(講談巡り)

移働する診断士

 この日も移働の合間に訪れたのは上野公園。子供の頃は動物園の家メージで少し大きくなると博物館や美術館へ足を運んだものです。
この上野公園は「上野のお山」と呼ばれる江戸時代の一大行楽地で、昔から寺社や桜の名所として有名なのは言わずもがな。
そしてこの日のお目当ては、夏なのに桜です。その名も「秋色桜(しゅうしきさくら)」。

 きっかけは、最近講談をよく聞くようになったから。と言っても伯山ブームでもなんでもなく、実は僕の曾祖父さんがどうも講談師(田辺南風とかなくなった父親からは聞かされたけどホントのところはどうかわからない)という話を前々から聞いていで、どういうもんだろと聞いてみたのが1年前。そしたら、たまたま神田伯山襲名と時期がかぶったのと、コロナでオンライン釈場が流行ったのが重なったから。この「秋色桜」は春に読まれる講談の題名にもなっていて、「講談師 見てきたような うそをつく」なんて言われていますが、こちらは本当の話。

 詳しくは、実際に3月ぐらいに講談を聞きに行ってよというところなので、簡単にあらすじを言うと、父と二人暮らしのお秋という7歳の娘が寺子屋で学ぶ姿をみた俳人の宝井其角が、彼女の字の美しさ感銘を受けて歌を教えたところ、「秋色」の俳号でどんどん上達していく。とある花見の時期に上野のお山で歌った一句を桜の木にかけたところ、宮様の目に止まり出世していくというお話。この頃は、花見客が酔っ払いながら作った戯れ句を桜の木にかけるのが流行っていたそう。でその桜の木は今も上野のお山にありますという話を聞いて足を運んだわけです。

 場所は上野の清水観音堂の脇にある大般若桜。きちんと木のそばには秋色桜の説明文もありました。ただ、この桜の木は当時のものからは代替わりしていて、現在は9代目とのこと。それでも、上野のお山は歴史を紡ぎながら続いています。

 ちなみに、上野と不忍池をセットにすると実は京都と琵琶湖の写し鏡になっているのは有名な話。比叡山の代わりに東叡山というのがあり、琵琶湖の代わりが不忍池。清水もあれば、稲荷もある。江戸に京都を持ってきてしまうあたりが粋なんでしょうかね。ちなみに、この界隈は落語や講談でも様々な話に出てきます。左甚五郎ものや、不忍池は唖の釣りなどなど。今度はもう少しゆっくり巡ってみたいものです。