中期経営計画を廃止

移働する診断士

タイトルにある通り先日、味の素KKが中期経営計画を廃止したそうです。

こちら、4月12日日刊工業の誌面に味の素の社長インタビューがあり、2020年から25年までの中期系ええい計画を廃止して2030年までのロードマップを策定するとのこと。元々の中期経営計画では、2020年から22年で構造改革を行なって23年から25年にかけて成長させるという予定だったものを前倒しして22年度から成長フェーズに入ったため、先を見据えて中期経営計画の廃止に踏み切ったとのこと。

前倒しで進んでいるので良い意味での廃止に見えました。

さて、この中期経営計画とロードマップの違いは、中期経営計画では売上高、収益目標を定めてそれに向かって進むスタイルだったものを、ロードマップでは、自己資本利益率(ROE)を指標に据える形にしたとのこと。2030年のあるべきスタ画を設定してそこからバックキャストでその時その時で何をすれば良いのかを判断していくスタイルに変わったと言えます。

この話を聞いて感じたのが、フォーキャストからバックキャストの考え方へ転換したという点です。これ、まさに経営デザインシートの発送法ですね。

この話を、担当部門の視点で考えてみると、通常の中期経営計画ではKPIとしての数値目標が設定され、それを各部門ごとにブレイクダウンしていきます。よって各年度ごとに各部門はその数値目標を達成するため、ある程度中期経営計画で定められた方向性に合わせた部門方針を打ち出し営業活動を進めてはいくものの、数値目標達成が命題となるために、マクロ視点での動きがどうしてもできにくい面があります。また、味の素の中期経営計画は通常の3年よりも長い5年となっていますが、現在は社会の流れが早いので5年前に建てた目標時点と経営状況も激変していまします。もっとも、5年とは言え最初の2年で体制を整えて成長目標を立てるところが含まれていたかもしれませんが・・・・(私は詳細を見ていないので)

この様な社会の流れに対応していくためには、5年の計画は長すぎるというわけです。ただ、計画が短ければいいというのもちがい、これでは短期的な目標しか打ち出せず、毎年年次の目標をクリアする作業に終始してしまうリスクがあります。そこで、大勢をみながら臨機応変に行動できる会社が求められてくるわけです。この時、バックキャスト的な考え方は有効ですね。

味の素のロードマップでも利益率目標なのでいちばんの主体に置かれているのは、売上規模ではなく会社の体質だと思われます。この体質=価値ということですね。これからの社会の中で求められる会社となるために価値を高めることが利益率に現れると考えられます。これを進める上で、大きな目標を2030年のあるべき姿に定め、そこに到達するためのロードマップを振り返ってみていくことができる様になります。そうすると、現時点の状況とのギャップを常に意識した経営となるので、社会情勢に合わせて細かい修正を繰り返していくことができるのです。また、各部門にとっても数値を追いかけるのではなく、それぞれの部門が自身の提供価値を理解して、それを行動指針にしていくことでぶれない事業運営が可能となり、会社としての正しい判断につながると思います。

私も、大手企業に勤めていた時には、中期経営計画が提示され、それに合わせて上長がブレイクダウンした目標に沿った数値計画を立てていました。しかし、年度が始まってしばらくするとその数値計画と乖離してきて、その足りない分をどうするんだという話が主体になり、計画の定性的な目標の方へ頭を持っていくことができにくかったのを思い出します。

計画はあくまで計画であって、修正されるものです。であるならば、会社全体で常に考えながら微調整が可能な計画である方がいいですね。そんなことを今回の記事で思ったのでした。