海外からの創業

移働する診断士

私は診断士協会の国際部というところに所属しているのですが、この部署の目的が中小企業の海外展開支援できる診断士を増やすというものです。この海外展開支援というのが、90年代ぐらいまでは日本企業が海外へ進出することを指していましたが、失われた30年を経てだいぶ様相が変わってきたと感じています。

というのも、国際部で現在取り組んでいることの主だったところは、もちろん日本の中小企業向けの海外展開支援向けのノウハウ作成や、今の国際に関するトピックを多くの人に知ってもらうためのセミナーではあるのですが、それ以外に増えてきたのが「在日外国人経営者」向けの支援という視点です。日本で事業をしていれば、日本の産業(GDP)を支えているということになるので、しっかりサポートしていく必要があります。一方でGNI(国民総所得)も重要ですが、この国民という考え方も、グローバル化が進む中で多様性に富む様になってきました。

東京でも、葛西ならインド人、新大久保は韓国人という具合に、特定の街に特定の国の方々が多く住む街が増えてきていますが、よくよく考えるとそういう場所ができてきたのこの20年で、それ以前は外国に方自体が珍しかったことからも、グルーバル化が知らないうちに進んでいたと言えますね。

さて、もう一つ忘れてはいけない視点が、日本の高齢化と人口減少です。この話はセンシティブなところを多く含んではいるのですが・・・今、多くの業界で人手不足となっています。これは日本の労働力が低下しているからで、求職者側から見ても仕事がないという状況になっています。企業側が採用したい賃金・条件と、働き手が応募したい賃金・条件がミスマッチしているということですね。以前であれば、日本は豊かでいい国だからこの部分に外国人労働者に期待したいとう国の思惑もありましたが、この20年で日本経済はさらに弱体化しているので、実はアジア諸国っから見ても、日本で働くということに対する魅力が低下している実情もあります。

とは言え、日本という国の魅力自体がなくなったわけではなく、日本の土地や文化に触れたいと日本で生活することを希望している外国の方もまだまだいらっしゃいます。ただ、その方々のビジネスに対する動き方が変わってきたと感じるのは、日本に労働者として来るのではなく、日本というコンテンツを活用して事業を始めたいと来る方々が増えたということです。

なので、海外の方で日本国内に法人を立ち上げたいという相談が徐々に高まりつつあります。また、海外拠点の企業が日本へ進出したいというニーズも高まってきました。なので、国際部での支援内容も日本企業のアウトバウンドから、海外からのインバウンドへ若干シフトしている部分があります。本来であれば、日本企業が日本のコンテンツを武器に海外進出をもっとしていけるといいのでしょうけれど、どうしても言葉の壁や発想の壁に苛まれて進まないのも現実です。

さて、今日ちょうどそんな話題を出したのは、先日私もインドネシアからの日本在住の方々で、日本での創業を希望される方たちへの創業セミナーの講師を行ってきたからです。実は、外国の方向けのセミナーを開催するのは初めてでしたが、日本人向けのセミナーと異なり、常に会話が途切れず熱心に様々なことを質問していました。創業に対してもとても前向きですし、その内容も日本人ではないからこそ可能なことを考えられていました。約3時間という時間があっという間でしたが、貴重な体験でした。

海外からこういう方々が日本で事業を起こされることで日本経済が活性化するならばそれも失われた数十年というトンネルを抜ける一つのきっかけになるのかと思いました。