計画を作るということ(その9):経営デザインシートでの提供価値

2023-02-13移働する診断士

 経営デザインシートを効果的に活用するうえで、しっかり検討したいのが、この価値の部分になります。このシートが尖った発想を活かすために作られましたが、その尖った発想の先にあるのが、事業がその相手に対してどういった価値を提供するか?だからです。

これを価値創造と言います。

ちなみに、内閣府の経営デザインシートのサイトにも価値創造社会へ向けてとあります。

社会・経済環境が、安定的なモノの供給が市場を牽引する20世紀型から、体験や共感を求めるユーザの多様な価値観が市場を牽引する21世紀型

内閣府HPより

 この価値の主体(エネルギー)となっているのが、無形資産=知的資産だと私は理解しています。デザインシートでは、この価値をドメインで表現しましょうとしました。ドメインとは、誰に、何を、どの様に でしたね。これをあるべき姿と、現状に対して当てはめていきます。

 例えば、鉄骨製品の製造会社があったとしましょう。その鉄骨は耐震構造への改修工事でよく使われていました。震災後はその需要が多かったのですが、それも一巡し、建設需要が減ったとします。そこで、鉄骨製造の技術を活かして、エクステリアへ参入したいとします。

 この場合、通常のドメインでは、建設会社へ、設計図どおりの鉄骨製品を、納期までに製造し現場で組み立てることになります。そのことによる提供価値は、建設会社か求める製品を正確に届けることで、安心してもらうことと定義できます。

では、これからの提供価値はなんでしょうか?

 ここは目的と照らし合わせながら、経営者として何を伝えていきたいかだと思います。エクステリアなので、構造のための鉄骨から毎日触れて利用される鉄骨になります。そうすると注文する人も建設会社から一般顧客に変わることが考えられます。一般顧客がその製品とどの様なストーリーを、歩むのかを考えてもいいかもしれません。

 一例ですが、常日頃良いものに触れており、自宅でもそのような環境で生活をしたいと考えている富裕層がいたとします。今までは、エクステリア商品を選ぶにしても建設会社が提示するカタログから選ぶか、イメージを伝えると製品が提案されるだけで、なかなか納得するものに出会えず、満足できていなかったとします。それをあなたが知った時に、顧客に対してどういう提供価値を与えられると思いますか?「世界でただ一つの納得できる住環境で日々を過ごせる達成感、満足感」を与えたいと考え、置いても美しいと感じる鉄骨性のエクステリア製品を、顧客と一対一で向き合いながら製造を進めていく。というドメインを設定できるかもしれません。

 別の例で、食料品としてハンバーガーを取り上げてみましょう。ハンバーガーといえばファーストフードの代名詞で手早く簡単に美味しく食べられるのが最初の頃の代名詞でした。これが最近はグルメバーガーと言われる高価格帯の商品が多数出てきていて、ハンバーガーを食べることで健康や充実を得られるようなものもあります。この、「健康」「充実」という言葉自体が提供価値に当たるのです。

こう書くと、ちょっとこじつけぽくも見えてしまいますが、そうではなく、ある事柄を違う方面から観察することで、実は提供者が見えていなかった価値が見えてくるということです。そして、人々が実は求めていたことがその見えてきた価値であれば、行おうと考えている事業は成功する確率が高まるとも考えられます。この発想は、これまでのフォーキャスト思考ではなかなか出せなかったものです。よく引き合いで日本の製品がこの20〜30年負けてきたのは、製造者視点で良いものを作れば売れると商品開発し続けてきたが、本当に消費者が欲しいものと乖離していったというのがあります。これは、まさにこのことで、開発(会社)が考えるフォーキャストに則るとどんどん機能を追加していけば便利になるだろうというのが、実は顧客はそんなものを求めていなくて、もっとシンプルで使いやすいものが欲しかったとなった訳です。そこで、バックキャストで「シンプルで使いやすいとはこういうことだ!」と提供価値を出してから、その提供価値とはどういったものなのかというのを戻っていくことがこのデザインシートの発想なのです。