インボイス制度について

移働する診断士

1ヶ月が過ぎましたが、インボイス制度が始まり、初めての経過月となりました。しかし、予告があったおかげで、混乱はあまりなかったように感じます。領収書や請求書を見ると、税務番号がTで始まるものが増えています。

これまで免税事業者だった多くの方が、個人事業主が主だと思われますが、来年二月以降の所得税の確定申告では、インボイス制度に基づいた対応が必要になります。インボイス制度は、消費税の適切な収納を目的としており、商品やサービスの対価に対して10%の税金がかかります。

この消費税を一旦は事業者が預かって、一定期間ごとに税務署に納めているのですが、事業をする上では、仕入れというものもあります。

一個100円で売られているりんごですが、八百屋で買う時には消費税10%が載せられ110円になります。
しかし、八百屋は問屋から80円で購入しとすると、その時にも消費税10%が載せられ88円で仕入れています。また問屋は農家から60円で購入しているとすると、その時にも消費税10%が載せられ66円で仕入れています。
と、最終的には100円で売られているりんごに対して10+8+6円の合計24円消費税がかかるので、税金の取り過ぎになるわけです。
そこで、「仕入税額控除」とすることで、それぞれ仕入時に支払った消費税を引くため、八百屋は10円のうち2円、問屋は8円のうち2円、農家は6円を払うことになります。(もっとも、農家もりんごを育てるために使った費用に対する消費税分は仕入税額控除で引くことが可能になります)

これが、消費税の大きな流れです。しかし、これまでは免税事業者というのがありました。これの経緯は消費税を導入した時の政権が批判を交わすために、前々年度の売上1000万円以下の事業者からは消費税を取らないとしたわけです。

これがどういうことかといえば、八百屋と農家が課税事業者で問屋が免税事業者の場合、八百屋の2円と農家の6円は納税されますが、問屋の2円は納税せずに自分の売上として計上できるという仕組みです。消費税というのは基本的には最終的に消費した人(八百屋でリンゴを購入した人)が負担しているものなので、消費者が消費税として支払った10円のうち、2円は納税されずに問屋の利益になっていたといえます。

そこで、インボイス制度できちんと徴収しましょうということになりました。

これは、課税事業者が「適格請求書」を発行することで仕入税額控除ができるもので、事業者は適格請求書発行事業者として登録番号を取得し記載するという仕組みです。なので、八百屋は問屋が免税事業者のままであると、的確請求書を受け取れないので、課税仕訳ができず、本来問屋が支払うべき2円だけでなく、農家が払った6円も含めた10円を納税しなければいけなくなってしまうのです。

なので、免税事業者との取引を適格事業者へ切り替えていく動きが生まれていくわけです。とはいえ、当面は特例措置として免税事業者からの仕入れについて一定割合は控除できるます)
また、免税事業者であること自体は違法でもなんでもないので、「うちは免税のままいく」ということも可能です。例えば最終的に消費者へ販売する八百屋が免税事業者の場合には効果を発揮しないというわけです。(この場合は、農家と問屋の8円分が納税される、一方八百屋は10円得をする)

この辺りの難しさは残ったままですが、多くの事業者は取引関係の途中にあるので、きちんと払わないと信用面でも不利になっていくと思われます。

ちなみに、仕入税額控除を行うためには、日々の仕分けでそのことを明確にしなければならず、結構経理事務の負担が発生しますが、簡易課税事業者の申請をすることで、業種別に定められた率を売り上げにかけ仕入税額都することが可能です。この申請は、事業年度が始まるまでにしなければいけません。一方で、インボイス制度に伴って課税事業者となった小規模事業者については「2割特例」というのがあり、簡単にいうと売り上げの消費税の2割を払えば良いというものなので、この特例が終わるまでに、状況に応じて一般課税にするか簡易課税にするかを選べば良さそうです。