BCP(事業継続計画)を考える時に

移働する診断士

毎年秋になると本格的な台風等来シーズンと言われてきました。しかし、近頃は台風の流れもだいぶ異なるようです。9月に入ってからも今年初の関東への台風上陸と何度か騒がれていましたが、結果としては上陸する前に温帯低気圧になりました。

以前は西から台風はやってくるイメージがありましたが、ここ近年は猛暑と共に台風の動きも以前とは異なってきて、太平洋上で生まれた台風は高気圧の力が強すぎるために西に流されていき九州・沖縄や台湾、中国が被害に遭う頻度が高まってきました。

とはいえ、コロナ前の2019年には千葉県を中心に過去最大級の台風が上陸し大きな被害を与えたのは記憶に新しいところかと思います。昨年は昨年で、静岡への台風上陸で町中が水浸しになるという事態もありました。

自然災害が一度起こると、経営にとっての影響も大きいです。2011年の東日本大震災の時を思い出してみると流通が滞り一時的な物不足になりました。当時の関東は電力不足を補うために計画停電を数ヶ月間実施し、人々の消費活動も一時的に停滞しました。そのために、一時的に資金繰りが厳しくなったり、実際に被災した企業では事業再開を諦めたところもありました。

その次の緊急事態が2020年のコロナです。こちらが大震災と異なるのは、経済活動の停滞期間が長期化したことだと思います。いつ経済活動が再開するかわからない状況はこれまでの災害とも異なる物でした。また、地域的ではなく世界中が被災というのも、大戦以来だったのではないでしょうか?

このような自然災害や緊急事態が起きた時に備えて準備しておくのが「BCP(事業継続計画)」になります。BCPが特に注目されたのは2011年の東日本大震災後です。この時の教訓もあり、自然災害を起きたときに事業をどのように継続していくのかということに注目して計画を作りましょうという流れができた物です。もともと、これ以前から東海大地震が起こると言われていたので、静岡県を中心に万が一が起きた起きた時の避難訓練などはずっと行われてきました。こちらは人命をすくるための初動対応にあたります。

いっぽうBCPでは初動対応とその後の事業を復活させるまでの手順を事前に計画することで、自然災害による影響を最小限に抑えることを目指していきます。

実際にこれが有ると無いとで、事業を再開するまでのコストも大きく異なりますし、事前対応も可能となるためリスク自体を減らしていけます。

これを計画する際に大切なのが、自社を取り巻くリスクをとして何が有るかを把握することになります。自然災害については、自治体がハザードマップというの出しています。多くは地震、風災、水害が起きた場合にどの地域がどのような被害に遭うかの度合いを示したものです。こちらを参考にすることで、自社の事業への影響を見ることができます。製造業や小売業、流通業は、その拠点の場所にどういうリスクがあるかを詳細に知ることができます。ちなみに、コロナ後は感染症に対する計画も作成することが求められるようになってきました。感染症がすぐにまた起きるかは誰も分かりませんが、備えあればということですね。

実際に、支援先でもこのハザードマップを参考に数年前にBCPを作成していました。ところが、ちょうどその数年後に実際に自然災害が発生したのです。この時BCPがあったためにその計画に則りある程度は対応できました。ただ、計画はあくまで計画なので実際にやってみるとその方法ができなかった面もあったそうです。そのような部分はきちんとBCPへ反映していくことが大切です。また、この時の災害はハザードマップの想定を超えた物でした。そのために、計画通りに行かなかった面もありました。ハザードマップはあくまで参考なので、それ以上のものが来た時も想定することが必要です。実際に東日本震災の時も想定以上の津波でした。千葉の台風被害も想定外です。ここ近年の異常気象がどのようなリスクを含んでいるのかはちょっと気にしたほうがいいですね。