物価上昇時に考えること

移働する診断士

日々、支援していく中で、一番多く耳にするのが「資金繰りが厳しいんです」と言う言葉です。

特に、最近は原油物価高の影響や賃金引き上げの影響もあり、多くの企業の収益を圧迫している状況になっています。そのため、コロナが落ち着き消費活動はだいぶ元に戻りつつあるのですが、コロナ以前と同じように事業運営していても、なかなか収益確保ができず厳しい状況のようです。

この世間の物価高に合わせて、価格転嫁をしたい事業者は増えつつありますがこちらもなかなか厳しいみたいです。このような中で、2024年度の概算要求の中に「下請け対策」に35億円の予算を計上し「下請けGメン」を増強すると言うのがありました。

この、下請けGメンは下請けとの取引に問題がありそうな場合に、改善むけた働きかけを相談企業に変わってしてくれると言うものです。この辺りは、専用のサイトがあり利用したい場合は、こちらに相談に行くといい形になっています。Gメンというか言う物騒な名前がついているので、マルサ(この言葉が古いかもしれませんが・・・)のように覆面調査によって下請けとの取引状況に対する現場を押さえて罰するというものではなく、中小企業から相談があった内容によって、業界団体や相手先企業へヒアリングを実施て、是正のお願いするというソフトな感じの制度ではあります。とは言え、元請け企業にとっては業界団体や国から指導が入る形にはあるので何も手を打たないわけには行きにくいというものです。もちろん、相談した企業については守秘義務は守られていきます。

また、下請け関係の問題についての悩み事解決のために専門家や弁護士に相談できる「下請け駆け込み寺」というのもあります。この二つは以前から中小企業庁の中にあった制度ですが、景気回復のためには大企業の回復だけでなく、中小企業を含めた社会全体の回復が必要なことと、物価高(+円安)の問題が大きくなってきたことから、今まで以上に重要視して取り組み始めたと言えます。

この、下請け関係について、製造業を中心に考えられがちですが、小売卸も結構大変な状況にあります。卸は商品構成が事業運営上最も大切ですが、製造業よりも小売業の方が商品の選択に対する範囲が広いため、同様の商品を取り扱っていればどうしても安い方になりますし、多少の違いだとやはり安い商品が選ばれる傾向になります。そのため、商品に価格転嫁すると簡単に取引先から仕入れ先を切り変えられてしまいます。なので、なかなか価格転嫁がしにくいですし、仕入れ先を切り替えられたとしても、そもそも下請け関係とは言えず、泣き寝入りするしかないというケースが多々あります。下請法という法律では、製造や修理、情報成果物作成、役務という取引に限られているためです。

さて、相談窓口に相談に来る方を見ていると、利益減で資金繰りに困り相談に来られる方もいらっしゃいますが、まだまだ、売上減少に歯止めがかからずに困っている方も多い感じを受けています。新聞等では、製造業系の指標から景気が戻りつつあるようですが、こちらも川下の小売やサービス業にまで来るのにはまだまだ時間がかかりそうです。

この売上減少に歯止めがかからないケースでは、注意が必要だと感じています。と言うのが、この歯止めがかからない状況の原因がなんなのかによるからです。コロナの影響+景気悪化によって一時的に顧客減少になっているのが原因であれば、世の中の景気が回復していけば需要も回復していくので問題ないように思えます。しかし、そのそも、コロナによる社会構造の変化や人々の考え方の変化によって、需要自体がすでになくなっているケースもあります。この場合は、細々と今の事業を続けていくことができるのかどうかの判断が必要になります。一方で、物価高と言われていますが、これがインフレであるとすると、上がった物価が元に戻ることはありません。この場合、今の収益構造で事業を続けていくことができないと考えられるので、価格転嫁していかなければなりません。

この辺りの見極めは重要ですね。