計画を作るということ(その7):経営デザインシートについて
さて、今回は、「経営デザインシート」の話です。前回までに書いてきたバックキャストとフォーキャストの流れをひと目で分かるようにしたのがこのシートです。
この経営デザインシートは2019年に内閣府が発表したものす。2000年〜2010年代は日本の経営環境が大きく変化した時代でした。20世紀は、ものの時代とも考えられます。まだ、豊かではなかったので、企業活動はそういった人々へ決まったモノやサービスを提供すれば事足りていた時代です。このような時代の経営では予め先駆者が開いて作り上げたセオリーに事業を乗せることで成長することができました。だから、予測もしやすかったのです。これはフォーキャストしやすいとも言えますね。
しかし、2000年を超える頃から、社会環境が複雑化してきます。
これには国際化、IT化が進んだことも大きく影響しています。過去のビジネスモデルは一つの国、一つの地域内で完結していたので、社会環境も目に見える範囲でしたし、把握し予測することも比較的容易でした。国際化は80年代は日本の生産を海外へ委ね安い物品を仕入れることを指していたと思います。しかし、この20年で日本のほうが物価が安くなり海外から日本へ様々なものが参入してくるようになりました。また、日本人も日本より海外市場を求めて出ていくようになっています。今までは、国内、国外と切り分けて、国内だけで事業をやっていくという選択肢成り立ちましたが、現在は黙っていても、海外から様々なことがやってきます。海外の有名企業が日本企業よりも使われるようになったなんてこともよくありますね。IT化もインターネット技術を中心に外部と情報のやり取りが活発になったことで、これまで成り立っていたビジネスモデルを破壊することが多くなりました。実店舗がどんどん減りECでの消費が増えています。まちなかから書店が来ていっているのはこのいい例ですね。
このような変化でも、日本企業の動きは全体的にはのんびりしています。また、高齢化の影響もあり、決定権を持つ方々は今までのやり方から脱却することができず、これまでは世界を席巻するような大手企業でも、事業縮小や海外企業に買収されるということが起こってきています。この原因を考えていくと、20世紀型の事業モデル(答えのあるやり方=フォーキャスト)でモノゴトを考える日本企業の習慣ではないかというところへ着目されました。企業には多くな人が働いています。また、日本の9割は中小企業です。そういった中に海外でも通用する発想を持った人材や企業はあります。これらの人々の考え方を優先的に考えられるビジネスモデルを構築するツールとして経営デザインシートは作られました。この内閣府のプロジェクトチームのリーダーの方は、2000年頃に知的資産経営を日本に浸透させるために、事業価値を高める経営レポートを作られた住田さんという方です。このときも、企業には目に見えない経営資産がありそれに価値がある。この価値こそが、企業が他社と差別化をおこない、成長する源泉になるため、これを高める計画を立てようというのがこのときのコンセプトでした。経営デザインシートでは、この要素も含めつつ、会社のビジョンを達成するためには、これまでにない発想を取り入れて成長していこうということを目指しています。
さて、前置きが長くなりましたが、このシートの説明です。
全体は、大きく4つのパートに分かれています。
一番上の部分が企業が目指しているビジョンやテーマになります。経営理念という言い方もしますね。なぜその事業を行うかの目的の部分です。これは、第3回でお伝えした内容になります。
続いて左側のパートが、現在の状況を「経営資産」「ビジネスモデル」「提供価値」で並べています。また、現状の課題も明確にしておきます。一番右側のパートは、目的を達成(その過程でも)したとき(目標時点)の姿を右側と同様(「経営資産」「ビジネスモデル」「提供価値」)に記載していきます。この右側はある時点を設定することで目的達成しやすくします。中期経営計画に使われることが多いので、3年後や5年後が現実的かと思います。このときにどういった外部環境の変化が起こるかも記載しておきます。
真ん中のパートは、現状から目標時点までになにをしなければいけないかを記載する欄になります。
形としてはものすごくシンプルですね。ただ、実際に使うとなると結構大変です。なぜなら経営者の方の頭の中にあること(暗黙知)を表に出す(形式知)のは経営者自身も得意でなかったりするからです。そのために、我々のような存在がいるのですが、逆にこのシートを作る際に、ヒアリングを受けるだけで全く考えてくれない経営者の方も多くいらっしゃいます。この場合は絵に描いた餅になってしまいせっかく作ってもそれっきりになることが多く感じています。
さて、今回はフォーマットについての説明でした。次回は(ひっぱるなー)、このシートの詳細について説明します。