マクロ視点でみる起業環境

移働する診断士

最近は、何かしら事業を始めるという機会が以前よりも増えてきている気がしています。特に、サラリーマンでも副業が認められてきていますし、定年という概念も揺らぎ、再雇用しながら事業を起こす方も増えてきています。また、女性や学生の創業も以前よりも数自体が増えてきているように感じていました。

ところが、国の創業希望者数の2019年統計を見てみると、2007年には101.4万人の希望者がいたのに対して、2017年には72.5万人と大きくダウンしていました。

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b1_3_3.html

人口減少や労働力不足という言葉がよく聞かれますが、ちょっとこの年間の労働力人口(就労者数+失業者数の合算)を見てみたら、2007年には6669万人に対し、2017年は6732万人と増加していました。ちなみに、この人口、2022年は6912万人とさらに上がっていて、意外と感じたのですが、よくよく考えてみると、定年延長や、再雇用などが進んできていて以前よりも高齢者の労働割合が高まっていることが背景にあるように感じています。そう考えると労働力人口全体に対しての企業希望自体はそれほど高くないと言えます。

さて、先ほどのは創業を希望者している人の数で、そのうちの半数が実際に企業の準備をしています。この割合は10年間であまり変化はなく2019年は36.7万人。この準備者から実際に起業した数の割合は43.6%なので、16万人の人が起業したと言えます。ちなみに、この起業した数の割合は2007年が34.7%だったので、増加傾向にあり、それだけ起業するための環境が整備されたと言えます。

では、実際に起業数はどうなのとかというと、法人設立登記数は2007年が10万社程であったのが、2020年に約12万社、2022年は約13万社と増加傾向にあります。当然、これには個人事業主(フリーサンス含む)の開業数を含んでいないの企業数の実態はもっと多いと思われます。それだけ、起業するということが一般的になったとも言えます。

なので、私が肌感覚で創業が増えていると感じてるのは間違ってはいなかったようです。

なんとなく、日本は円安や不況で経済活動が停滞しているように感じています。特に、人手不足は街の中で様々な店舗やサービスを受けていると感じていて、そのために売上を上げられていないという話を多く聞きます。このケースは大きく二つに分かれると支援している経験からは感じています。

一つは、いわゆるサービス業の従業員で、飲食店や小売店の接客業、ドライバーなどが該当します。こちらは社会インフラ的な部分もあるため、実際に我々の暮らしへの影響も出始めています。身近なところだと、配達に時間かかるようになってきたり、配送料の値上げ、店舗も接客してもらえない、飲食店で食事提供までの時間がかかる、など皆さんも経験したことあると思います。こちらは、若手人材のなり手が減少しているのも影響しています。ドライバーなどは高齢化が進んでいるのも感じています。これに2024年問題も被るのでさらに不足することが懸念されています。一方でこの分野で増えてきているのが外国人労働者です。

もう一つは、特殊な職能に特化した分野の従業員不足です。美容院の店員やアパレル業の従業員、士業のスタッフもそうかもしれません。これらのケースではせっかく人材を育てても、他に移られてしまったり、フリーランサーになったり、独立されたりすることが増えています。このケースでは、会社という形よりも仕事を行う人的ネットワークとして事業を回せるような形を模索していくことが大切かもしれません。

こういうことも背景にあり、起業数が増えているのかもしれません。