資金繰りを追うことの難しさ

移働する診断士

「資金繰りは大切ですよ」という話をここでは何度も記載してきましたが、これを実行に移すのは結構難しいです。というのも、資金繰りは、実際のお金の入金と出金の流れを追うことが目的ですが、売上が立つタイミングと入金、費用をかけるタイミングと出金がズレることが難しくしています。

もう一つが、先のお金の流れを予測するということが意外と難しいからです。

毎月一定の売上と費用が出ていく商売であれば資金繰りもある程度たてやすいのですが、不動産や卸売などは取引先の状況に大きく左右されるので、売上の波が激しく、二ヶ月後の予測すら立てられないと言う声をよく聞きます。

このような場合は、予測の資金繰り表と実態の資金繰り表の2種類を用意することがいいと思います。これは資金繰り表の使い方にもよるのですが、1〜2ヶ月先の資金繰りの状態を見たいのであれば、実態の資金繰り表となりますし、どのくらいの売上を上げないといけないのかを知りたいのであれば、予測の資金繰り表が必要となるからです。

この両者の違いは何かというと、売上・費用を確定情報で入れるのが実態、実態で一旦長期的に入れてみて資金繰りがショートしそうな時に、変動する項目を増やしてショートしない額に調整するのが予測の資金繰りになります。

実態の資金繰りでも、売上の波がある場合はどうしたらいいのでしょうか?
この場合は、先の予測は、正直「エイヤ」になってしまいます。ただ、季節変動があるのであればそれを含めて立てればいいとおもいます。この時、過去数年分のデータが残っているのであれば、その傾向は参考になりますね。もう一つが、年度目標やこれまでの年間の売り上げから、その平均値を入れてしまうのもやり方の一つです。

一方、経費の立て方は固定費と変動費を明確に分けて考えます。
固定費とは、賃料、給与、保険料、通信費、広告宣伝費、接待交際費、などはその代表になります。変動費は、もう一つが毎月の金額が変わるものです。一番わかりやすいのは原価です。ただ、資金繰りの場合は売った量の%ではなく、仕入額になるところは注意が必要です。決算書や税理士から受け取る試算表での原価は売上に対する額になるためです。そして、売上に対して費用が上がるものも変動費になります。輸送費・運賃、労務費(製造業場合)、外注費などが一般的です。また、水道光熱費、燃料費のように季節変動の影響を受けるものもあります。こちらは前年実績と世間の動き(最近は原油高、物価高)から額を決めていくことになります。

注意しないといけないのが突発的(実際はきちんと予測すればある程度はわかるのですが)に発生する出金です。例えば、海外取引を行っていると関税の支払いや燃料費(高騰しているのでサーチャージ等がかかる)などが代表的ですね。また、予測しずらいのですが、為替の影響を受けるものもある程度自分なりのルールで予測を立てる必要があります。為替差益、為替差損を年度計画で入れるのは難しいですが。資金繰りの場合は直近の傾向から予測して入れていけばいいと思います。

このようにして、資金繰り表を立てていきます。ただ、最初のうちは資金繰りの予測が結構外れます。なので、運用していきつつ微調整を繰り返していくことが大切です。また、慣れてくると、資金が足りなくなる時期もわかってきて事前に手を打つことが可能になります。

支援先の資金繰り表運用を数年間やっていますが、大体の費用項目の特徴がわかってきたのでだいぶ高い精度で運用ができています。(毎月の売上高の変動が結構激しいです)

また、あまり細かくやらないのもコツです。毎月の残高を確認してずれがあれば、そこをまとめて調整額とかで入れておけばいいのです。あくまで、先の資金がショートしないように確認していくことが目的ですからね。