スタートアップと融資

移働する診断士

創業融資の相談を受けている場所柄か、スタートアップ企業からのご相談を受ける機会が結構あります。国の施策の方でも今後は日本初のスタートアップを増やしていきたいとその支援のために予算を振り向けたりしています。

しかし、金融機関からの融資となると、まだまだスタートアップ企業が活用するには難易度が高いと感じます。特に、創業期に融資を受けたいという相談が多いのですが、金融機関からの融資の場合は保証の問題があります。多くの場合は保証協会の保証をつけることになるのですが、この保証は返済できない場合のリスクを見て保証引受の可否および保証料が定められていきます。なので、保証協会からみてリスクが高い事業は引き受けてもらえないため、金融機関としても保証人のない融資は実行することができず、スタートアップ企業が求める金額の融資を出すことが難しいというわけです。

では、スタートアップ企業は融資を受けられないのかといえば、そんなことはありません。私が支援してきたケースでも融資実行前至ったケースはあります。ただ、当初スタートアップ企業が求めてきた額に達しないケースは多いです。では、なぜこうなるのでしょうか?先ほど書いた通り通常のVC向け事業計画の内容ではリスクが大きすぎると判断されるため、事業計画の数的根拠が求められ、それをしっかり説明していかなければなりません。ですが、VC向けでは売上の成長曲線は急激なカーブを描かないと、魅力を感じてもらえませんし、事実その様に事業を立ち上げていくことを求められますが、金融機関の場合は、きちんと実績を積み上げて成長させていくことが求められます。

たとえば、売り上げが、VC向けは、1年目100万、2年目1000万、3年目5億、4年目20億と言った計画はよく見かけますが、なぜ、3年目で5億になるのかを金融機関に伝えようとしてもなかなか理解してもらえません。もちろんそれなりにしっかりした計画と根拠があれば話は別ですが、まだ始まっていない事業に対してはこれを信じてくださいと言ってもなかなか難しい面があります。なので、VC向けとは別に金融機関向けの事業計画を作るケースがあるのですが、この場合、1年目100万、2年目1000万、3年目5000万、4年目1億(これでもかなりの成長と見られる)と徐々に売り上げが上がっていくカーブの計画となるため、先行投資額もそこまでは必要ないでしょと、最初の部分に対しての融資に限られるため、決定額が抑えられていく傾向があります。

また、スタートアップのVCに対する資金調達についても、以前に比べるとだいぶ環境が変わってきたと思います。以前は投資したいVCが多く、事業計画もそこまで細かい数値計画は見られず、どのくらいのマーケットをどのくらいの熱意を持って取り組んでいくのかと言った感覚を優先に投資されていたと聞いています。しかし、コロナ後は欧米でもスタートアップの失敗経験塔が積み重ねられたこともあって、事業計画の結構細かいところまでしっかり見られる様になりました。また、数値計画まで見られるということは、その根拠(市場規模やアプローチ方法、運営体制)をしっかりと説明できなければいけません。最初のドアノックは「熱意」が大切ですが、そこから先は「根拠」と「実行力」が求められているというわけですね。ただし、スタートアップへ対するサポート体制は逆に手厚くなってきたと思います。VCも単に報告だけ求めるのではなく、成功のために、そのネットワークを活用して進められる様に様々な支援を行っています。

一方、金融機関側もスタートアップに対して融資を引き受けることが難しいことを理解(引き受けたくても保証の関係で引き受けられない)していて、そのために、VCを金融機関自らが立ち上げるケースが最近は見られてきました。こちらは、公的なボックホーンがあるので、そこを活用して事業を進められるのが特徴です。

スタートアップとして事業を考えるのであれば、その資金調達に金融機関融資はあくまで補助と考え、きちんと出資者を見つけることに力を注いだ方がいいと思います。もちろん、最初は小さく事業を始めて徐々にという場合は通常の創業融資が有効です。

逆に、事業が立ち上がってきて先の計画に成長が伴ってくると金融機関の融資は受けやすくなりますね。