昔と比べること

移働する診断士

「昔だったら〇〇だったのに・・・」

このキーワードが気づくと口から出ていることが増えてきたする。学生の頃、新人の頃、自分より上の人たちが盛んにしてて「嫌だなぁ」と思っていたのに。それだけ時が経ったということかな?

企業支援というよりは子育ての場面でそれが多くて、自分のことではないけど自分ごとになる。
だけれど手を出せないという部分で心の中に生む不安から出てくる気もしている。
よくあるといえばある子育ての悩みですね。

さて、この「昔だったら」というのを聞いて嫌だった頃のことを思い出してみると、「そんな昔なこと言われても」という気持ちが一番大きかった。自分が生きている時代よりも以前のことを言われても、その時代を生きていない人間にとってはまってく知らない話なのと、その時代背景というのがあって環境も全く異なる。なので、過去の前提のことを持ち出して文句を言われても困ってしまう。

だけど、今はそれを口にしてしまうのは、自分の中で以前は存在しなかった「過去」という時間尺を手に入れてしまったからだろう。こういう仕事(診断士:経営支援)をしていく中ではこれは注意しないととおもう。

診断士の仕事って「診断」「助言」がセットになっています。これがなぜかといえば、一人一人の事業者にとって置かれている環境が全く異なるので、そこを把握しないと「助言」はできません。これ抜きでやろうとすると上記の「昔だったら」と自分の中の常識を前提にあれこれ話してしまうことになります。

でも、「助言」ありきで物事を進めてしまうことがあり得るとも思います。それが「フレームワーク」と言われるもの。
なんでも、物事には「鉄板」がつきもの。この通りにやっていれば大きくずれないというものです。それがフレームワークと言われるもので、物事を考える時の手順が一つの表になっているものが多かったりします。このフレームワークがあることで、助言が明後日の方向へ向かうことが防げます。これは一つの利点。ただ、実は明後日の方向に価値があったら見落としてしまいます。これは欠点。その次に来るのが、フレームワークの部分部分での助言パターン。

「A」だったら「B」というもので、これは過去の様々な実績からおおかた「B」になるだろうというのが統計(多くの人の感覚)的に導き出されているもの。ただ、これも絶対「B」とは限りません。ほんとうに「B」なのかは「診断」をしなければならないのです。

この「診断」するときに、「B」になる前提だと進めてしまうと「B」になる根拠ばかり探し始めてしまいます。そうすると、本当は「C」をすべきなのに「B」と助言してしまいます。

私たちが歴史を学ぶのは「過去」に人々がしてきた失敗も成功も含めて様々な経験があるからです。しかし、時代はどんどん動いていきます。特に最近はITの進み具合がまだまだ早くて、過去の10年の変化以上に大きく前提が変わってきています。この状態で「過去」の成功例ありきで物事を進めるのは危険になってきています。早い分時代の流れを常に追っていくことが大変にはなってきていますが、みていると改革に成功している事業者はこれにいち早く柔軟に対応して行っているように思います。「B」ではなくて「C」という道を見つけられて・・・・・

では、どうすれば「C」に辿り着けるのか?これには今までの常識を捨てることが必要だと思います。診断士の視点で言えば、過去の良い部分は考慮しつつも、前提である各事業者が置かれている環境を正しく見極めることが必要だと思います。支援していく中でときには「昔だったら」という言葉が経営者や社員、自身からも出てくるかもしれません。そういった時は立ち止まってみてください。

「診断」をするときには、ある程度前提を広げておいてから、冷静に第三者目線で行うことが重要だと思います。