ノルウェーの2023選挙結果より

ノルウェー

昨日、ノルウェーの国政選挙がありました。

日本にいると、まず注目されないので、日本語による記事はすぐには見つからず、現地のメディアを一生懸命翻訳しながら理解する形になるので、世界は近づいたけれどまだまだ、情報をリアルタイムで理解するハードルは高いですね。(この辺りは時間が解決してくれるのでしょうが・・・)

さて、本題。

今回の選挙では、現政権の左派が敗北して右派政権に3年ぶりに戻ることが確実になりました。そして、保守党が99年ぶり第1党になったそうですが、その得票率は25.9%とのこと。日本の選挙情報を見ていると、この得票率で第1党?と思いますが、多様性あるノルウェー(逆に多くの国はそうかも知れません)は政党数も多く、政権も連立となるのがあたり前な事情があります。

前回の選挙は2021年で、この時は労働党が第1党となり、2013年から続いていた右派政権を倒す形になっていました。この時の争点だったのが、SDG’s。石油依存からの脱却を推進したい左派政権が樹立されたわけですが、たった2年での右派への政権移譲となりました。

ノルウェーは石油産出国で、輸出額の25%近くは石油です。その他には、漁業、造船、海洋開発に関する産業が強く、日本にも多くの技術者が来ていて、何気に日本との結びつきも強い国です。私が初めて訪れた1995年は物価が高い国とはいえ日本とそれほど変わらなかったのを記憶していますが、最後の訪れた2017年は日本の物価が上がらないという状況なのもあり、物価はものすごく高く感じたのを記憶しています。現在は円安の影響もあるので、さらに物価は高くなっていると思います。世界的に見ても物価は高くEUに加盟しなかったことで、独自の金融政策も取りやすく、隣のスウェーデンと比べても裕福な国になっているといえます。その原動力が石油開発になります。

福祉国家ノルウェーと言われていますが、この福祉を維持するために石油で得た利益はノルウェーの年金機構へ預けられ、年金機構の運用益で福祉を可能にしています。また、この年金機構は力が強く世界中の企業へ投資することである意味これらの企業に対して物申すこともあります。例えば、環境に配慮していないという理由でその企業への出資を引き上げるということもありました。

ただ、石油は以前からいつかは枯渇されると言われています。石油が発見されるまでのノルウェーは農業・漁業が主産業のヨーロッパの中でも貧乏な国でした。それが70年代の石油発見から急激に経済成長を果たし今につながるわけですが、いずれなくなるかも知れない石油に依存して良いのか?というのは毎回焦点になるみたいです。

石油に関しては、環境的にも脱CO2では槍玉に挙げられることと、現在の技術開発は脱石油(例えば電気自動車(EV)など)へ家事が切られているので、石油依存リスクは高いのです。そもそも、石油開発が環境破壊につながるとも言われています。これまで、国を豊かにしてきてくれた石油だけにその扱いには当事国自身が苦慮しているのが伺えます。一方で、右派時代に進めた電気自動車への大規模助成金とインフラ整備のおかげで国内の電気自動車保有率が50%になっています。国内では石油を使わない方向へ確実にシフトしているのだと思います。

さて、前回政権をとった左派は、この環境問題への徹底した対策と社会主義的な富の分配を掲げて2年間政治運営してきたわけですが、コロナの長期化にロシア・ウクライナ戦争の影響もあり、国内の金利は上昇、電気代をはじめとする高インフレにも見舞われ不人気な政権となってしまいました。(直近でも大規模洪水などの自残災害も発生)

政権に返り咲く予定の右派の前首相であったソルベルグさんは、減税と高齢化を掲げ、環境問題の左派に勝ったというのがニュースの見出しにもありました。環境問題も大切だけれど、現状のインフレや社会問題解決の方が求められていたともいえますね。

ちょうど、日本も自民党の党人事と内閣改造の話が出ていました。一つの党の話が国政と一致する日本と、選挙が機能しているヨーロッパの小国の比較も民主主義を考えるきっかけになりますね。