夜間飛行

2014-02-24移働する診断士

前々から読みたいと思っていたのがこの本サン=デグジュペリの「夜間飛行」。
星の王子さま(1943)」の筆者でありフランス空軍の英雄であった、「サン=デグジュペリ」の処女作「南方郵便機(1929)」と第2作目の「夜間飛行(1931)」が1冊に集録されています。
どちらも、航空黎明期に船や列車よりも早く郵便を届けられる郵便航空事業を支えた人々をテーマにした作品で、ベンチャー精神を拠り所に突き進むあたりが気持ちよくもあります。「星の王子さま」のイメージが強かったのですが、デグジュペリ自身は若いころから飛行機に憧れその後飛行機乗りとなりこの2作品にあるとおり実際に郵便航空事業に従事していました。このときの経験をベースにこの2作品は書かれています。

きっかけは、
知人が発した「Vol de nuit」という言葉に惹かれて調べてみたら行き着いたから。
昨年6月に主催する旅サークルで箱根の「星の王子さまミュージアム」で、テグジュペリが飛行機乗りだったことと「星の王子さま」以外にも自身の経験を元にした小説を書いていたということを知ったから。
ちょうどそのころ子供が飛行機にはまっており一緒になって黎明期の飛行機についてWikipediaで調べたりしてその飛行機の旅に興味をもったから。
です。それではこの本の2作品を簡単ですが紹介。

<夜間飛行>

まず、最初に収められているのが「夜間飛行」。こちらは、郵便航空事業を成り立たせるために、当時避難の多かった夜間飛行で南米とフランスを結ぶ航空網をつくり事業運営をしていた男の孤独な戦いが描かれている。主人公は飛行機乗りではなく、郵便事業の経営者であり厳格な監督官であるリビエール。彼は前代未聞の夜間飛行による郵便事業で他の乗り物を利用した郵便事業に打ち勝とうとこの事業を始めた。これまで全く自己がなく事業が成功しているのはすべて予定通り飛行機を飛ばすために飛行機の整備からルート間の電信網や飛行機乗り達の教育を厳格に取り決め運行しているから。そして厳格にしなければ、人間の弱さが呼ぶミスにより重大事態(それは事故で有るかもしれないし、事業自体が成り立たない状況かもしれない)を呼んでしまうと信じ、どんな些細なミスに対しても愛情から罰則を与える。
そんな中、パタゴニアからの飛行機(パタゴニア機)が嵐に遭い経由地を予定通りに通過しない事態が発生する。この飛行機を巡ってリビエールとそれを取り巻く人々の想い(各地の無線局、パタゴニア機を必死に操縦する男、到着しない飛行機を心配する妻、同僚の到着を待ちヨーロッパに飛び立とうとしている男、リビエールを信じる現場監督)が交錯する中パタゴニア機の運命とリビエールの郵便事業の明日はいかに!

<南方郵便機>

収録順は後になるが、こちらが処女作にあたる「南方郵便機」。舞台は夜間飛行同様に欧州(フランスのツールズ)と南米(アルゼンチンのブエノスアイレス)を結ぶ郵便航空事業の話だが、こちらのこの作品は実際にデグジュペリが郵便航空事業で雇われアフリカ北西岸のカップ・ ジュピー飛行場長として赴任していた時の経験が元になっている。無線通信の切れ切れのメッセージをバックサウンドにツールズから南米へ向かう飛行機乗りのベルニスとモロッコ南部のカップジュピーの飛行場長の私の友情とベルニスの昔(?)の恋のをうまく交差させる展開に思わず飲み込まれました。解説にも描いてあるのだけれど、この物語は特に精読することで物語の厚みをはっきり感じることが出来る。(正直一度読んだだけではストーリーをきちんと理解できなかった)そのくらい面白い話です。とは言え世間一般には前出の「夜間飛行」の方が賞賛されこちらはあまり有名ではないみたいですが、実は映画化されていてその映画のスタントをデグジュペリその人が引受け見事やってのけたそうです。10年ぐらい前にデグジュペリを尊敬している宮﨑駿氏はこの小説の舞台のカップジュピーの地へ紅の豚のモデルの飛行機で降り感動し一旦出した引退宣言を取り下げもののけ姫の制作にかかることになったという逸話もあるそうです。ちなみに、この本の表紙絵は若き日の宮﨑駿氏が描いたものだそうです。

今回はテグジュペリの飛行機乗りの話をしましたが、いくつか紹介しておきます。

星の王子様ミュージアム

箱根から御殿場へ向かう道の途中に星の王子様ミュージアムがあります。外見は星の王子さまの世界を模した建物ですが、中にはデグジュペリの飛行機のときの貴重な資料が沢山。
今回は数家族で行ったのですが女性陣のおすすめで行ったものの、飛行機関連のものはお父さんの方が見入ってしまいます。
ここの資料館はうまく出来ていて、デグジュペリの飛行機乗りの一面を知ることができる。

テグジュペリの最期

1944年の7月31日にドイツ占領下のフランスを偵察するために単独飛行に出てそのまま消息を絶ちました。その飛行機が1990年台後半に飛行機がその海域を調査したところ見つかったということでちょっとした話題になっていました。この調査から、彼の最後に関する様々(テグジュペリを墜としたという元ドイツ軍の方の話とか、実は的な話とか・・・)なドラマが始まっているみたいです。気になる方は調べてみてください。(検索すると色々なサイトが出てきますよ)