物価高における財務構造について

移働する診断士

ガソリンの価格がとうとう190円を超えてきて、原油・物価高の影響が直接感じる様になってきました。円安の影響だけでなく、これは、原油産出国の動きなども絡んでのことですが、数ヶ月前までは150円台だったことを考えると、この急激な値上げに運輸業をはじめとして自動車を利用されている方は先の見通しを見直した方が良さそうですね。

物価高になりつつあると騒がれて1年以上、その影響を本格的に感じる様になってきました。一番顕著なのがスーパーマーケットです。日頃から買い物をしている方は物の値段の上昇が手に取るようにわかると思います。

今日のテーマは価格設定。

原油や生鮮(野菜、魚、日配品)は価格が変動的なので、店舗へ行ったら思った以上に値上がりしていたとびっくりすることがあります。一方で定価が決まっている商品は「◯◯から値上げします」の貼り紙がされ一定期間置かれて値上げが実行されていきます。最近では、鉄道も運賃値上げが始まっていますね。消費者目線で考えると「なんでも値上げして困る」となるのですが、この価格はどう決まっていくのでしょうか?

事業活動を行ううえで、利益を得ることは必須になります。なぜなら利益がなければ事業を回すことができないからですね。(基本の「き」)

財務諸表を見てみましょう。利益は5種類あります。

売上 10,000,000
  売上原価 2,000,000
売上総利益 8,000,000
  販管費 7,500,000
営業利益 500,000
  営業外損益 20,000
経常利益 480,000
  特別損益 0
当期純利益 480,000
  税金 144,000
税引き後当期純利益 336,000

すっごく簡単にするとこんな感じですね。

売上が10,000,000円あったとして、売上原価の部分が商品であれば仕入れや製造にかかる費用になります。そこから「売上総利益」というのが出てきます。この売上総利益が事業を行なって会社が使える資金になります。

今の物価高では、この売上原価の部分が値上がりしてきているのが最初の問題になります。原価が値上がりすれば、当然会社の資金は減るので事業活動に問題が出てくるわけです。

次に「販管費」というのがあります。この部分は会社が事業を運営する上でかかる経費になります。人件費、広告宣伝費、運送費、光熱費、などなど。ポイントなのはこの中に「人件費」が含まれていることですね。なので、販管費を引いた後の「営業利益」がその事業の本当の収益力といえます。

その後の「営業外損益」は利子受け取りや融資の利息支払い、補助金の受取、為替による損益、本業界の収益費用が入ってきます。これらは、毎年発生するのでその結果として「経常利益」が出てきます。「営業利益」か「経常利益」かといえば、業種によって重要視される度合いは異なってきます。そして、資産の売却などによる「特別損益」を加味した「税引き前当期純利益」を求めて、最後に税金を支払い(ここが決算+確定申告)、会社としての利益=「税引き後当期純利益」が求められるわけです。

今、物価高であることを政府が容認していますが、これは、社会全体が値上がりすることが前提になっています。この中に、社員への給与も入っているわけです。

いままで、売上高7,000,000円、原価2,000,000円、人件費4,000,000円で利益は1,000,000円という事業構造だったとします。

原価が10%アップして原価2,200,000円になったとします。

そうすると、

売上高7,000,000円、原価2,200,000円、人件費4,000,000円で会社の利益は800,000円に減ってしまいます。
事業運営には人件費以外にも経費はかかりますし、今であれば光熱費、運賃は日々上がってきています。こうなってくると、会社としては世の中の値上げに合わせて売上高を上げるしかなくなります。(人件費を下げるのは最終手段)

売上高7,700,000円、原価2,200,000円、人件費4,000,000円で会社の利益は1,500,000となります。
しかし、これでは不十分なわけです。というのも、売上高が上がるということは物価が上がるということです。社員の人件費=給与が上がらなければ、人はお金を使わなくなります。(これが消費ですね)
ちなみに、会社の利益は1,500,000と今までよりは増えていますが、これまで企業はバブルやサブプライムの教訓かできるだけ人件費を増やさずに利益を会社内部に貯める傾向にありました。これが内部留保という物です。

なので、売上高7,700,000円、原価2,200,000円、人件費4,400,000円と人件費もきちんと増やしていくことが、重要です。

ですが、ここで問題があります。というのが、大手企業は多くの仕入れ先や下請けを使って事業活動を行っているので、事業ポジションも強力で、比較的売上高を上げ、原価を抑える動きを取りやすいのですが、仕入れ先や下請けとなる中小企業にとっては、原価は上がるが売上高を上げられないという状況が発生しているのです。
よって、売上高7,000,000円、原価2,200,000円、人件費4,000,000円となってしまうのです。

これに対して、前回紹介した下請けGメン等の制度の拡充に動いているわけですね。

ただ、国の制度だけでは解決できないのも事実なので、経営者として自身が価格交渉や取引関係の見直しを進めていく必要があるわけです。