コンサルティングということ

移働する診断士

経営コンサルタント(中小企業診断士)という仕事をやっていて感じるのは、経営のプロとは言われながら「経営者の気持ちに本当に寄り添っているのかな?」ということを感じる瞬間があることです。

コンサルタントは、経営者の課題発見から解決までが一般的な仕事とはなるのですが、その時にそう支援していくのかというと、フレームワークというものを活用していくケースが多くあります。ただ、これはあくまで一般解なので、最適解ではないんですね。なので、フレームワークを片手になんでも当てはめてしまうと、残念な結果になってしまうということがあります。

よくよく思い返してみると、診断士試験を受験する時によく言われたことなんです。「企業に寄り添って診断助言していますか?」と。

コンサルタントはコンサルティングする人という意味です。そして、コンサルト=相談する、同席するといった意味になるそうです。そう、経営者と同じ目線で相談を受けて考えて行動を共にするという意味になります。

こう書くと、コンサルティングというのは、支援先の方のことをよく知る必要があります。ただ、大手コンサル会社の顧問とかなら別ですが、中小企業が顧問としてコンサルタントを長期間つけているケースは稀で、多くは金融機関や公的機関の無料相談を活用することになります。この場合、コンサルタント側も少ない時間の中での対話となるので経営者の課題を見つけるところまでが精一杯になってしまいます。

ここを効率的に考えようとすると便利なのがフレームワークなのですが、先ほど書いた通り、フレームワークに振り回されると、「企業に寄り添わない診断助言」になってしまうリスクがあるわけです。もう一つが、企業に寄り添うためには、その企業が置かれている環境をきちんと理解することです。

これ、経営の世界では「外部環境」というのですが、この外部環境も、世界経済〜日本経済といったマクロ的な視点から、特定の業界、地域、取引先環境といったミクロ的な視点までその粒度は異なります。このうち、特定の業界、地域に自分自身が明るくなるのは大切だと感じています。

今の私だと、旅行業、アパレル業、IT関連、あたりは支援した先も多く業界に対する理解度も上がってきたと思います。本当は、自身がコンサルに就く以前の業界が一番明るいものなのですが、私の場合はITと保険というちょっと特殊なものなのと、ITは逆に業種を選ばないところがあるので、今になって役になっているとは思います。

それと、自身のコンサルティングの経験も必要になります。特に、週に1日だけ相談窓口という業務を行っているのですが、これは1時間の枠内でさまざまな業種の経営者からの相談に乗る場になっています。これが、千本ノックで、会うまでどういう人かわからない、短時間で話を聞きながら、相談内容を起点に、課題や簡単な対応方法(方法まではまずいかないですが)まで伝えようという意識で取り組んでいます。なので、自然といろんな事業者を見ることになるので、横串で世の中の動きや、それぞれの会社の取り組みなどを知ることにつながります。これが、次のコンサルティングに生きていくわけです。

そういうことを繰り返していくと、定期的に、今の自分は「経営者の気持ちに本当に寄り添っているのかな?」と考えるようになってきました。これは、機械的になっている=自分のフレームワークに落とし込みすぎていないか?ということを自問自答している感じです。

さて、コンサルティングは経営者からの相談を受け一緒に進んでいくことなのですが、それに対する価値は見えにくくとても難しいものだと感じています。これ、ものの価値と同じ考えで、金額にした時に、コンサルタントが考える価値と経営者が考える価値が、中小企業の場合はかなり開きがあると思います。これはなぜかというと、ゴールの見えにくい仕事だからと思います。

弁護士なら特定の課題が起きてからその解決までを法務の側面で解決するのでゴールが見えやすいです。税理士、司法書士、弁理士もそれぞれの分野での代行というのがゴールになっています。しかし、診断士は領域が広すぎるのでなんでも対応可能なんですが、他士業ができることは全てすることができないという特殊な士業です。でも、一つだけ楽し行と違うのは、経営者に寄り添って長期的にゴールに導くことができる仕事だと思います。

このゴールとは何か?それは、「儲けさせてあげること」なので実は成果は一番見えやすいはずなんですよね。

ただ、コンサルタント側も、ここを見落として聞いてあげることが仕事と思うと危険かなと最近、支援先の社長さんと話していて改めて感じました。