電子帳簿保存法の改訂
先日のインボイスの話に関連して、来年の1月からは電子帳簿保存法も改訂になります。これの方が私としては結構インパクトが大きいのに、中小企業では対応が遅れているんじゃないかなって思っています。
これが何かというと、「電子取引で渡された帳簿は電子的に保存しなければいけない」というものです。電子取引とはメールやウェブサイト、システムを介して相手とやり取りをすることで、帳簿とは取引における書類のうち財務に関わるもので、請求書、納品書、領収書、注文書、契約書などです。なので、メールで見積書や領収書が送られてくる場合、それを原本として、システム上に保存しなければいけないということになります。
これまで、紙中心でやられてきた企業では、メールで送られたものをプリンターで紙出して取引証明の帳票として保存してきたと思いますが、これが逆にNGになるということです。というのも、電子取引で送られてきたものは本当に相手が送ったものかの証明が紙の場合は逆にできないからです。
では、どの様に保存すればいいかというと、電子署名をつけて後から検索できる様にします。これを「タイムスタンプ要件」、「検索要件」といいます。
まず、「タイムスタンプ要件」ですが、これを実現するためにタイムスタンプを付与できるソフトを使必要があります。このタイムスタンプというものは、「その時間にその書類が存在していた」ということと「その書類が改ざんされていない」ということの二つを証明するもので、インターネット上のTSA(時刻認証局)の発行したデータを書類データに付与することで可能となります。この付与についてはAdobiAcrobatなどを使うこともできますが、会計ソフトのクラウド版では大抵の場合対応し始めているので、そちらを使って付与してあげるのがいいと思います。
「検索要件」がその電子書類を検索しやすい様にしておくことです。一番簡単なのはファイル名に日時、支払い先、金額をつけてあげる方法ですが、クラウド会計ソフトではファイルをアップロードした後でそれらの情報を入力してあげれば検索条件を満たせるものもあります。
では、紙で受け取ったものはどうすればいいのかというと、今まで通り紙保存で大丈夫です。ただ、この場合は原本7年保存のルールは変わらずなのと、今後は電子と紙と混在するので、後から確認する時には手間になります。そこで、紙の帳票も電子保存に一本化してしまうのが楽だと思います。電子保存してしまえば紙の保存は不要になりますし、後から探す時にも楽です。そのためには、紙の帳票を読み取らせてタイムスタンプをつけて検索要件を満たせば良いのです。多くのクラウド会計ソフトでは、ファイル化してしまえばそこから先のプロセスは同じになるので作業量も少なくて済みます。
ちなみに、紙の帳票を電子化する際のファイル化では、写真を撮ってそれを元にするのとスキャナー読み取りの2種類があります。私はPFUのScanSnapというスキャナーを使用していますが、こちらのいいところは読み込ませた時のファイル名に日時、支払い先、金額の3項目を自動でつけられるところです。
電子取引の電子保存以外は既に方が施行されているので今から練習としてこの運用を試してみるがいいと思います。
もちろん、国税関連、決算関連の書類も今後は電子保存の流れになっていくと思います。また、取引先が電子でしか対応していない場合も多くあるので、紙のみで運用ということ自体がNGとなるのが24年1月ということになります。(ただ、完全切り替えできない事業者向けの救済措置はあります)
これらの流れの先にあるのは国税側が細かいところまで効率的に確認していこうという流れがあるのは確実です。タイムスタンプ要件と検索要件があれば税務調査の時に税務署側の負担はさらに軽減されていきます。また、各社のデータがクラウド上に集まるということは、そのデータを見ることも可能になるというわけです。これを監視社会と捉えるか効率化と捉えるかは難しいところですが、IT先進国ではこの流れが普通になってきていますので、なくなることはないと思います。