京都で景観を考える
前田利家の妻まつの菩提寺である、芳春院を訪れました。
この寺は大徳寺の一番北に位置するのですが、この寺の方丈から見える景色が、まつが住んでいた時代と変わらない佇まいを残していました。
どういうことかと言うと、方丈の全面には方丈前庭(花岸庭)と言われる枯山水の庭があるのですが、その向こうには大徳寺の数々の塔頭の瓦が波を打つように連なり、その先には秋の澄んだ空が見えたのです。(写真撮影禁止だったのでお見せできないのが本当に残念ですが)ここには明治以降の様式の建造物は避雷針だけという、京都でも奇跡的な場所とのこと。
確か北山にある円通寺の借景も同様だったと思いますが現在はとうとう住宅開発が始まってしまったそうです。(以前訪れた10年前は写真禁止でした)
これには、この場所ならではの以下の偶然重なったおかげです。
1 大徳寺は日本の禅宗の中心地となり様々な塔頭が寄り添って出来ている。そのおかげで大徳寺は広い境内を持つことになった。
2 この芳春院のある位置は広い大徳寺の境内でも一番北側(奥)にあり、広い境内を見渡す位置にある。(境内にマンションやビル、電信柱が存在しない)
3 大徳寺のあるこの辺りは京都駅よりも約50m標高が高い為、京を見おろす位置にある。
ちなみに、北側にある庭園から塀の向こうの風景をみると、電信柱やテレビのアンテナが連立しています。
面白い。偶然にこういう場が残った事がとてもオモシロイ。
日頃、電柱やアンテナ、コンクリートの景観に慣れてしまった身からすると、新鮮でした。ただし普段人が暮らす場としてはやはり現代的なものが皆無なのは現実的ではないと思います。
やはり普通に人が暮らす場では今のものと昔からのものがうまく調和してこそ本当の場になるのだろうなと。(この辺は建築家や都市計画家の方々がいろいろ考えているのでしょうが)
そういった意味でも、京都という歴史劇場空間だからこそ、こういった粋場が残っていって欲しいと思いました。
芳春院を扱ったサイト(写真もありました)