SAFの活用が本格的に

移働する診断士

「くず〜ぃ、くずぃ、屑屋でございます。」の掛け声で始まるのが、江戸時代にあった屑屋さん。街中を回りながら、家庭で不要になった紙くず・ぼろ・古綿などを買い取ったり、逆に売ったりする商売です。落語や講談の中話の中では名脇役として今もよく登場します。

最近はだいぶ減った気もしますが「ちり紙交換」や「廃品回収」も似たようなところがあります。屑屋の場合は、直ぐにお金の必要な人が日用品を質入れするために使うこともあったようです。(講談の葛飾北斎と谷文晁では、お金に困った北斎が布団と火鉢を質入れするシーンも・・・)

これらの商売は、昔から再利用が比較的簡単にできるものが対象でした。質入れしたものは中古品として売り出すことができます。

さて、最近はリサイクルやエコロジー(これらの先にSDGがある)の名の下に、さまざまなものに対する再利用が進んできています。

紙、金属、プラスチックはゴミの分別にあるように、自治体等が回収した後にリサイクルに回されています。特に、鉄に関して実は結構進んでいます。世界の鉄の生産量は18億8,500万tです。鉄の生産には「鉄鉱石を原料とする私たちが一般的によく知る高炉―転炉法」と「屑鉄(鉄スクラップ)を主原料とする電炉法」の2種類があります。高炉―転炉法は教科書によく出てくる、製鉄所の巨大な施設が必要なのに比べ。電炉法はそこまで巨大な施設でなくても済む点も特徴です。現在は、製鉄量の多くが原材料が多く採れる中国となっていますが、これを除いた場合の割合では初めて電炉が高炉―転炉の割合を超えたとのこと。(世界鉄鋼協会の2023年統計より)限りある資源のリサイクルが進んでいることを示しています。
日本でも、今や鉄製品の多くはリサイクルされたものになっているとのこと。国内製鉄所の廃炉が続くのもうなづけます。(一方で、リサイクル鉄や、アルミ、チタンといった特殊鉄は頑張っているようです)

さて、地球資源の中で以前から枯渇が懸念されているのが「石油」です。こちらは二酸化炭素排出の問題も強い状況です。人の近年の革命の中で一番大きいのは移動手段を手に入れたことです。その一番手である自動車は、二酸化炭素排出を減少させるために、EVシフトが進んできています。電気燃料とすることで自動車が直接二酸化炭素を排出する量を削減することができます。また、EVでは自動車が動く力から発電も行えるので、エネルギー効率も良くなります。

移動手段で、一番二酸化炭素を排出しているのが飛行機になります。こちらは、ジェット燃料という特殊な石油を使うことと、飛ばすためのエネルギーも大きいため、EV化は中々難しい状況です。そこで注目されてきているのがSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)です。これは何かというと、飛行機の燃料を石油から他のものへシフトしていくものです。例えば、植物由来のバイオマス燃料や、飲食店や家庭が出す廃油などです。最近は、古紙から得たパルプを原料エタノールを作成しSAFへ変換する技術にも取り組んでいるようです。

これらのものがなぜ、持続可能なのかというと、まずは化石燃料を使わないということです。化石燃料を使う場合は、使った後は地球上の二酸化炭素のみが排出されます。一方で植物由来の場合は使った分の植物を植えることで、二酸化炭素を吸収してくれます。植物も若い方が二酸化炭素の吸収は良いそうです。また、化石燃料を使う量が減ることで、地球全体の二酸化炭素を減らすことにもつながります。そういったことから、SAFは注目を浴びているようです。

ちなみに、経産省では、2030年に国内ジェット燃料使用料の10%にあたる171万キロリットルをSAFに置き換える目標を掲げています。

この、SAFの原料に今後は意外なモノがなっていく可能性があります。ひょっとしたら飲食店が普通に廃油を取引として利用したり、荒れた山の持ち主や空き家がSAFの原材料になる可能性もあります。これまでゴミと思っていたものが、価値を生み始めるということです。

これまでの常識を覆す流れが出てくるこの時代の特徴を表していると言えますね。