そろそろ返済開始?!(借換保証のはなし)

2023-01-04移働する診断士

 先日、とあるクライアントさんからコロナ借換保証についてのお話がありました。
こちらの制度は2022年10月28日に閣議決定された、コロナ後も事業運営に苦しむ事業者を救済するための制度で、今年(2023年)の1月10日から開始される制度です。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sinyouhosyou/karikae.html

コロナの時に緊急融資を多くの企業が受けています。当時はいつまで続くかわからないと言うことから、貸す側も借りる側も経営状況に対して通常よりも多めの融資を結果として受けることができました。特に、民間ゼロゼロ融資といわれる、無担保、無保証、3年間無利子(実質なので、保証料や利子は国や自治体が負担している)を活用した企業も多くあると思います。この制度が始まったのが2020年5月で、今年の5月から利子支払いが始まります。また、据え置き最長5年とは言えそれよりも短い据置期間の企業も多く、そろそろ返済が始まりだしています。しかし、思ったより長期化したコロナに加え、物価高により経営状況が悪化したままの企業も多く、国として何かしらの金融対策をしなければと言うことで、打ち出されたのがこの制度です。

 制度は、「借換」と言うもので、今の借入を形のうえでは一旦全額返済したうえで、同じ金額以上の新たな融資を受ける形になります。この時に据置をすれば返済時期を遅らせることが可能にもなります。例えば、2020年5月に1,000万円を3年据え置き借入期間10年としていた場合、2023年5月から、毎月約12万円の返済が開始されます。これに対して2023年3月に同条件で借り換えを行うと返済開始は2026年3月まで遅らせることが可能となります。また、据え置きが2年だった場合は、すでに返済が昨年5月より開始されていますが、これを全額返済した形で新たに融資を受けることになるので、同じく据え置き2年であれば2025年3月まで一旦返済を止める(実質的に)ことになります。このときの借入額を前回同様の1,000万円とすれば、返済した分を水増しすることも可能です。

 ゼロゼロ融資の借換だけでなく、他の保証付融資にも適応可能というところも大きいです。また、100%保証(セーフティーネット4号を使っているケース)では100%保証のまま借り換えも可能です。あわせて、以前のコロナ融資は基本既存事業でコロナを乗り越えるための運転資金が融資目的でしたが、今回は「事業再構築等の前向き投資に必要な新たな資金需要にも対応」となっているとこは嬉しいところです。これがあるので異なり事業を始めるためにも使うことが可能です。(セーフティーネット保証についてはこちらを参照)

 こう見ると、とても有効な手段に見えますが、今日時点で開示されている資料だけ見るとちょっと注意も必要そうです。

 まずは、要件ですが「売上高または利益率の減少要件(5%以上)、もしくはセーフティネット4号または5号の認定取得が要件。」とありコロナ後も売上減少していることがあります。この売上減少の比較対象が厳密にどことの比較なのかによって使えるケースと使えないケースが出てきます。コロナ以前だと2019年〜20年の影響がで始めた時期となりますし、前年比という場合もあります。ここはもう少し詳細な情報が出てきてからですね。また、セーフティーネット4号または5号とあるのでこちらは既存の制度が引き続き続くものと思われます。それぞれ、4号は会社全体の売上20%減、5号は特定業種の売上5%減であることが必要です。いずれにせよ売上5%減なのでセーフティーネットが取れていれば要件を満たすとことになると思われます。今後は5号認定の取得ニーズが増えるのかもしれません。

 もう一つ、「金融機関による伴走支援と経営行動計画書の作成が必要」とあり、こちらが要件を高めているかなぁと感じています。金融機関による伴走は定期的なチェックなのか、専門家派遣を受け入れることになるのか不明ですが、何かしら定期的に報告することが必要になりそうですね。そして、受けるための最初のハードルがこの経営行動計画書ではないでしょうか?コロナ時は運転資金として口頭で「これだけ必要」と言えばなんとか借りられるケースもあったと思います。しかし今回は、この状況を乗り越えて返済を開始するために「こういう計画でこのように進めます」というところまでを計画立てることが求められています。計画書のフォーマットも掲載されていて、書式自体は1枚ものに見えますが実際進めるにあたっては細かいところまで銀行と保証協会のチェックが入ってくるかと思います。(こういう場面で専門家を活用いただけると確実ですね)

 また、ゼロゼロと大きく異なるのが、今回は保証料と金利が自己負担になる可能性が高いということです。発表資料では、「保証料:0.2%等(補助前は0.85%等)」「金利:金融機関所定」とあります。保証料については融資を受ける際に引かれて入金されますが、ゼロではないので1,000万円であれば2万円ほどになります。金利は難しいところです。借り換えしないでも3年過ぎれば利子は払わなければならないため、今借り換えした場合とどちらが金利条件が良いかによってきます。また、借り換えすることで、金利支払い期間も伸びるので、本当に必要かは検討する必要があります。

 どの融資でもそうですが、必要以上に受けることは自分自身を苦しめることになります。現在の想定で返済が可能であれば、無理に借り換えをしないで進めていく方が良い場合もあります。特に、今回のコロナで初めて融資を受けた方は一度完済した方が信用もつきますし、本当に必要な時に融資を受けやすくもなります。もっとも、必ず借り換えできるわけではなくあくまで、金融機関と保証協会の2つの審査が必要になることも頭に入れておいてください。