制度融資について、その4

2023-12-18移働する診断士

制度融資の活用についての話のつづきです。

融資までにかかるリードタイム

制度融資は、市中の金融機関と自治体(場合によっては窓口が商工会)と保証協会で連携して行う制度です。なので、それぞれの審査が必要になります。

融資をあっせんする自治体は、その企業の財務的な部分と融資目的からこの制度の趣旨に合うかどうかを見てあっせんしています。事業者にとってはお得なこの制度ですが、金融機関も保証協会もボランティアで費用を下げてはくれません。あくまで、その事業者に対して自治体がその自治体の財源を使って支援しているだけです。前回も書きましたが、納税しているからその権利があるというわけではなく、その事業の趣旨に合っているかが重要なのと、融資なので融資返済し切れるのかがとても重要になります。利子補給と聞くと融資返済額の一部なのでそれほどの額にならないような感覚を受けるかもしれません。しかし、約1%の利子と考えると、例えば2000万円の1%は20万円です。年間これだけの利子を自治体としては補給するので決して安くはありません。(場合によっては、困っている企業の場合、支払った地方税より額は大きいかも・・)

市中の金融機関は、制度融資でも通常の融資の一つとして取り扱います。そのため、その企業の体力に見合った融資かどうかを判断していきます。当然金融機関の判断で融資できないとなるケースもあります。最近多いのは、ヴァーチャルオフィスの利用時に信金系で事業実態を確認できなくNGと言われることですね。そのほか、担当者は積極的だけれど、本店の審査でダメなケースなど、通常の融資となんら変わりません。

そして、保証協会です。こちらは、申込者の信用を審査していきます。いわゆる保証枠があるかどうかという話が出てきますが、会社ごとの保証枠はその時点で変化していくので、前回6000万の保証枠があって3000万借りたから残りの3000万の枠は残っているから必ず借りれるというわけではありません。今回の審査で財務状況を改めて確認したところ保証枠が4000万となれば残りの1000万しかないということになります。

このように、3つの期間でそれぞれの審査を行なって初めて融資実行となりますので、申し込みから融資を受けるまでの時間がかかるのもこの制度の特徴です。自治体によっては、融資あっせん書を発行してもらうまでの手順も混雑度も異なるので急ぎで資金が欲しい場合は日本政策金融公庫や通常の融資を活用した方がいい場合もあります。市中の金融機関の中にはコロナを通して活用が一般化したことから「とりあえず制度融資」という担当者も多くいますが、そもそも条件が合致しなかったりして、無駄な時間を費やすケースもあるため、経営者自身が事前にその辺りは調べておくことも必要ですね。

融資実行後の注意点

なんとか制度融資を受けられたら、それでおしまいとはなりません。設備融資を受けた場合はきちんとその設備に使ったのかの確認があります。(これは金融機関でも同じですね)多くの場合は領収書のコピーを自治体へ提出してくださいと言われます。自治体としては正しく制度融資が利用されているかの確認が必要というわけです。

もうひとつ、制度融資の一番の支援策は利子補給です。利用者側から見ると利子は勝手に補給されるので気にしていないと思いますが、自治体側は半年に一度その事業者がその自治体に存在するかを確認して利子補給しています。例えばA市の制度融資を利用していて、B市へ本店登記を移転した場合は、A市の制度融資利用要件から外れるため、利子補給は停止され通常の利息を支払うことになります。ただ、融資自体を返さなければいけないというわけにはなりません。また、個人事業から法人なりした場合も法人なりした法人の所在地はA市である必要があります。(ちなみに、このようなケースの場合は必ず金融機関へ連絡を忘れずに!)

融資を受けた後も、この条件を満たしておくことが重要ということですね。これ以外のも細かい要件が自治体ごとにあるため、よく契約書や自治体からの説明を覚えておいてください。

制度融資は事業の助けになる良い制度ですので、利用の場面に合わせてうまく活用してください。