中小企業白書2023の概要案が出ています。その2

移働する診断士

前回からの続きですが、今回から各テーマについて、斜め読みしつつ思ったところ・・・・

最初のテーマは、「成長に向けた価値創出の実現/新たな担い手の創出」です。
ここで私が注目したいと思ったのは「価値創出」というキーワードです。
これ、内閣府が打ち出した価値創造社会への移行を全面に打ち出しているように感じています。この、価値創造社会の文脈の中で私が取り組んでいる経営デザインシートが生み出されていました。この背景は、別の記事にも書いていますが、20世紀のものを作れば売れた時代から、体験や経験が重視される時代に移行したため、他と同じことをやっていては経営が成り立たなくなったということがあります。そこを打開するためには、常識にとらわれない考え方を取り入れていくべきということから、バックキャストが主体である経営デザインシートの話へとつながっていくわけです。

というわけで。「価値創出」が一つのテーマとして挙げられたことで、時代が価値創造社会へ移行しつつあることと、コロナにより一層モノからコトへのシフトが進むということを感じずにはいられないわけです。

さて、概要の全体像ですが、ここでは「一つでも多くの中小企業が価値創出することが日本経済の発展になる」と書かれています。中小企業一者一者の力を合わせて発展していこうというメッセージになります。そのためには、「戦略」と「行動」が必要と当たり前のことが書かれています。この実施主体である「経営者」にフォーカスを当ててまとめているとのこと。

ここで、思い浮かぶのが経営デザインシートの時の発想です。他と同じことをやっていてはこれからの時代は勝てないので、尖った発想の人材のアイデアを活かしましょうとなっています。これは、大企業の場合で、中小企業の場合はその尖った発想を経営者が考えて実行することになります。そのために、経営者にフォーカスを当てているとも言えますね。

「戦略」については、以前からの中小企業経営のセオリー通り、差別化でニッチ市場を目指していきましょうということが書かれていました。この戦略を考えるときに価値創造の観点から戦略を組み立てましょうということになります。

そして、「行動」主体となる「経営者」の部分ですが、上と重複しますが「経営者」自体が「プレイヤー」となることが重要です。その経営者の支えとなるのは、経営者ネットワークです。これは、知的資産経営の「関係資産」に当たりますね。コロナをうまく乗り越えられた企業には「関係資産」がしっかりしている企業が多かったと思います。これと同様の発想ですね。

今、日本の経営者環境で問題となっているのが、経営者の高齢化です。こちらの対応は待ったなしの状態なので白書でも「事業承継」についてはファーカスを当てています。以前と少し異なるのは、だいぶこの問題に対する環境が整備されてきたのと、中小企業自体も事業承継を強く意識してきたことから、高齢化に歯止めがかかり始めたそうです。これは良い兆しですね。事業承継は単に経営者が変わるだけでなく、会社の体質、体制を変えるチャンスでもあります。その必要性や、その時にしっかり周りが継承を認めながら事業再構築できた企業ほど成功しているそうです。我々診断士の中でもこの分野を専門にやられている方が増えていましたので、支援環境もだいぶ整っていると思われます。

続いて、「行動」するためには人材も必要ということが語られています。これも当たり前と言えば当たり前なのですが、今は人手不足な時代。如何にこれからの事業に必要な人材を明確化して揃えられるかが成功の近道になっています。この部分は人的資産の領域になります。また、行動するためには、資金と推進体制(経営ガバナンス)も重要です。特に資金調達については、これまでの金融機関からの融資に加え様々な方法が出てきているので情報収集してしっかり取り組みたいところです。この部分は構造資産の領域ですね。

全ての資産がすでにあることはあまりありません。新しい事業を取り組むにあたって必要な資産を外部から調達することもあります。その一つの手段として注目されてきているのがM&Aです。この手法もだいぶ活用されてきていて成功例が紹介されていました。ここも関係資産→構造資産・人的資産と考えられますね。

というように、最初のテーマは知的資産経営+経営デザインシートの発想がなぞられているように私には読み取れました。