中小企業白書2023の概要案が出ています。その4

移働する診断士

白書斜め読みの最終回です。今回のテーマは、中小企業白書、小規模事業白書の両方に関わる共通基盤についてとなっています。共通基盤という言葉が少しわかりにくいのですが、要するにこれらの事業者を支援していく外部機関のことで、国、自治体、各種支援機関(この中には中小企業診断士も含まれる)がどの様に支援していくかを指しています。

今回は3つのトピックに焦点を合わせています。

  1. 価格転嫁:取引適正化
  2. デジタル化
  3. 支援機関

いずれも、今の時代を強く反映した内容になっていますね。

1:価格転嫁、取引適正化

こちらは、この1年で大きく変化があった部分です。ウクライナに始まる世界情勢の変化に伴い原油高が大きく上がりました。これに伴い物流コストがかかる様になったり、輸入品が入ってこないことによる物価高が起こっています。また、小麦などはそれ以前のコロナ期からコスト高になりつつありました。一方で、日本はこの数十年賃金がなかなか上がりにくい状況にあり、国際競争力は下がってきています。これに加え円安により輸入品自体が高価になりつつあります。

中小企業の取引環境はこの影響を大きく受けています。原材料費、仕入れが高騰していますが、販売価格への転嫁ができず利益が圧迫されています。特に特定の取引先に依存している事業者の場合は、仕入先からは値上げを求められるもの、販売先からは逆に値下げ要求を受けたり、値上げ交渉をしようものなら同業他社へ切り替えられてしまうという厳しい環境に置かれています。そこで、この価格転嫁の後押しを行政としてもしっかりしていくということが語られています。具体的には行政として価格転嫁の交渉キャンペーンをおこない、事業者が交渉しやすい環境を作るとともに、行政が大手取引先等に対しては行政指導をおこなっていきます。また、全体としての価格転嫁に関する情報開示することで社会として価格転嫁しやすい環境を作ることを目指していきます。

2:デジタル化

デジタル化は経営を進めるためには必須となっています。コロナを経て中小企業でもデジタル化はだいぶ導入が進みました。特に、これが進んだ企業では経営者が率先してデジタル化に取り組んでいます。また、このデジタル化は経営者だけではなく、組織的に戦略的に進めるほどうまくいくと言われています。ただ、このデジタル化のためにはこの分野に明るい人材が必要なので、社内で育成していくのですが、この時にきちんと目的を持って育成することが大切です。また、このデジタル人材に求めるスキルレベルは高度なデジタルに関する知識まで必要ではなく、デジタルツールを活用する能力の方が重要だと当医系的に示されていました。

3:支援機関

最後が、中小企業自体を支援する機関についてまとめられています。支援機関といえば、私もそうですが中小企業診断士がなる認定支援機関がよく上がります。これらの支援機関は専門分野も異なりますし、支援範囲も様々です。そこで、支援機関の情報を見える化することで支援機関自体の能力向上や支援機関同士の連携を可能とする方向が考えられています。もう一つ重要視されているのが、支援機関による伴走支援です。これまでの支援は、計画策定にとどまるケースが多く実行自体は中小企業の経営者任せとなっていました。そこで、計画策定から実行までをしっかり支援機関が伴走することが事業者の事業再構築には必要としています。

と、連載で書いているうちに、概要書ではなく白書本文の方が公開になっていました。
本文では、それぞれのテーマに合わせた事例企業紹介もされているので経営の参考してみてはいかがでしょうか?

https://www.meti.go.jp/press/2023/04/20230428003/20230428003.html