創業時には事業計画を

移働する診断士

この数年、経営相談窓口を担当していて、「創業」される方が年々増えているように感じています。
特に、リタイア後の創業よりは20代、30代の方の創業が増えています。

創業というと、一大事業のように以前は捉えられていましたが、これは日本の終身雇用前提の文化が強かったからだと思います。特にバブル期まではサラリーマンであれば右肩上がりに取得は増えていたわけで、それを捨ててまで創業する必要がなかったとも言えますね。しかし、この30年でみなさんご存知の通り状況は大きく変わり、サラリーマンでも自己研鑽により何かあった時には自分で食べていくことが求められる風潮に特にこの数年で変わってきました。これは、ひょっとしたら大企業体制が崩れ始めているのかもしれません。

ということもあり、若いうちは企業でしっかりビジネスの基礎を学ぶものの、ある程度得るものを得たと感じた若者から次々と創業に踏み切る例があるように感じています。一方で、仕方なく創業になる人が出てきているのも事実です。勤務先の経営状況が悪化し、創業に踏み切る方もコロナ中から徐々に増えてきている気がします。

さて、創業の仕方でwebを検索すると大体のところで、「まず事業計画を立てましょう」と書かれています。計画と言われて構えてしまう方も多いと思いますが、これは作ったほうがいいです。

事業というものは正直「行き当たりばったり」になります。というのも、相手や自分を取り巻く環境に大きく左右されるので、その時その時の状況に応じていかざるえなく、計画を立てたとしても、9割9分その通りには進まないからです。でも、事業計画があることで、道に迷わなくて済むからです。

ということは、創業時の事業計画というものは自分がこれからやろうと考えていることを実現するためのロードマップを作る作業といえますね。ただ、「計画を作りましょう」と話すとものすごく考えて考えて時間をかける人がいます。ある程度のリスクや予測は大切ですが、あまり考えすぎるのは良くないと思います。というのも、さきほどのとおり事業は「行き当たりばったり」になるものだからです。そのため、自分の進むべき方向を認識するためのものと考えて作るのがいいですね。

この計画書もう一つの使い道が、自分がやろうと考えていることを他人に知ってもらうためのものです。では、その他人とは誰でしょうか?例えば、同じ業種の人や我々コンサルタントであれば、さまざまなアドバイスをもらうことができます。VCや金融機関であれば、資金を貸しても大丈夫かの判断材料になります。なので、計画書の中では、「定性的」な要素と「定量的」な要素が必要になります。この辺りは、私の過去記事を含めていろんなサイトにあるのでそちらを参考にしてもらえればいいかと思います。

創業時の事業計画書の話については、創業融資あっせんの窓口で毎回説明しています。通常金融機関から融資を受ける場合、多くはすでに進んでいる事業に対しての設備や運転資金が目的になります。貸す方の立場から見れば既存事業の状況が貸せるかどうかの判断材料になります。なので、確定申告書と決算書の提出が求められます。こちらを見れば、慣れた担当者なら大体の経営状況がわかります。(実は、問題点もある程度の当たりがついてしまいます)なので、その融資目的と決算書から融資の判断ができてしまうのです。しかし、創業時はその材料が全くない状況です。なので、履歴書と事業計画書が必須となります。この人はこれから何をやろうとしているのか?それをどのように達成しようとしているのか?人柄はどうか?お金の計算は出来そうかなどを事業計画書から判断しているわけです。逆にいえば、創業時に経営能力の基礎が備わっていることを相手に伝えるチャンスでもあるといえますね。なので、創業時の事業計画書は作ったほうがいいです。

ちなみに、創業後の融資でもこれまでの状況を大きく変える場合には、金融機関から事業計画書の提出が求められるようになってきました。世の中の動きが早く、事業再構築などのが求められている現在なので、決算書だけではその会社の価値が測れなくなってきたともいえますね。