中小企業白書2023の概要案が出ています。その1

移働する診断士

4月4日に、2023年版中小企業白書の概要案が提示されました。

この白書を読むと、中小企業を取り巻く現状と、これに対して国や関連機関がどのような方向へ持っていきたいのかを読み解くことができるものです。これを見ることで自社の置かれている状況をマクロ的(鳥の目)の視点で知ることができるのと、全体の方向性から、自社にとって対応が必要なことや、これから出てくる制度などの予測ができたりまます。もちろん、国のしたい方向性が、すべての会社にとって合致するとは限らないので、そこは自身の事業の方向性と照らし合わせての判断になります。

どうしても、日本の経済は大企業中心と思われてしまうのですが、日本にある企業の9割以上は中小企業ですし、小回りが効き地域に根ざした中小企業が日本の経済の支えになっていることは変わりません。(以前、中小企業はすべて大企業に吸収されるべきだなんて政治家がいましたが、それは事実を知らない発言だなぁと、思ったものです)なので、毎年の指針として白書はあります。もちろんこの白書は中小企業だけでなく、大企業にとっても世の中の流れを掴む上では参考になるものです。

ちなみに、診断士の受験生時代は出題傾向を知るためにこの白書を毎年読んでいました。ただ、漠然とした知識としてしか定着していなかったのですが、実際に独立してみるとこの白書がバイブルと言われたことがよくわかるようになりました。

毎年白書は4月下旬に正式に発行されますが、それに先駆けて提示されるのが今回の概要案になります。大きくは変わることがないので、今の概要案は白書全体を俯瞰するのに適しています。

今回はこちらをちょっと斜め読みしていきたいと思います。2023年の白書の構成は以下のとおりです。

1:総論・・・・中小企業・小規模事業者の動向
2:テーマ別分析
−1:
成長に向けた価値創出の実現/新たな担い手の創出「中小企業白書」
 −2
地域の持続的発展を支える事業者(地域課題解決等)「小規模企業白書」
 −3:中小企業・小規模事業者の共通基盤「中小企業白書/小規模企業白書」

1の総論で現状把握をおこない、2のテーマに挙げられているのが国が特に重要と考えている部分になります。なので、2のテーマに関することを各企業が取り組むべきであり、そのために国家予算をかけて各種施策を進めていくことになります。すでに進められているものもあれば、これから取り組み始めるものもあります。
今年のテーマを見ていくと、「価値創造」「人材」「地域課題」「支援環境」の4つが大きく取り上げられているように見えました。ちなみに、以前は「中小企業白書」一つでしたが10年ぐらい前から「中小企業白書」と「小規模事業者白書」に分けられて、それぞれの規模に応じたテーマを深掘りする形に変わっているのです。

ナナメ読みの初回は全体骨格をざーっとまず、1の総論部分を・・・

この動向の項目はだいたいその年のトピックを中心にまとめられています。
「現状認識」で、コロナが落ち着いてきたけど業種によって回復状況は異なる
「物価高騰」で、物価が急激に上がったけど、それに対して企業は収益確保を頑張っているよ。
「人手不足」で、法規制が厳しくなっているので効率化に取り組んでいるし、労働環境の改善で従業員が働きやすいようにして離職を食い止めているよ。
「賃上げ」で、企業は賃上げ頑張っているけどできないところもあるよ。賃上げのためには「価格転嫁」や「生産力」を上げるための投資しなさい。だけど、「価格転嫁」はまだまだで商習慣として定着させたい。「設備投資」は求められていて、「イノベーション」もしないとね。特に「イノベーション」は新たな市場を生むけど「設備投資」は必須だよ。「イノベーション」を進めるため「知財」は活用しようね。「イノベーション」の具体例として「GX」があるし、「海外展開」はその環境が揃ってきたのと海外の方が市場は旨みがあるから、狙っていこう。でも、日本の「地域」は大切だし中小企業はそのための要だから「地域経済」ために利益を上げてね。
と無理やり繋げるとこんな感じになります。

トレンドとしては、政府の言う物価水準を上げるために賃上げしたいというのと、経済力をつけるためにイノベーションを推進したいと言うところに集約しているように感じます。まぁ、ようするに今のままではダメだよということですね。

次回以降は各テーマを斜め読みしたいと思います。