提供価値というもの

移働する診断士

参加している、経営のデザイン研究会では、経営デザインシートを探求するために、一般公開されている事例をもとに経営デザインシートに当てはめて、その作成方法や検討内容についての議論を行なっています。(デザインシートについてはこの辺りから参照)

このシートは経営者が自身の事業を考える時に使うものなので、経営者自身が作ることが本来の形で、我々支援者はそのサポートをしていくものですが、こういったものをなかなか経営者の方が作るのはハードルが高く、本来の作り方と内容が結構ずれてしまうことがあります。

正確にいうと、このシートの作り方をきちんとレクチャー(チュートリアルを体験してもらう)してあげないと難しいのですが・・・

さて、このデザインシートの中で私が一番注目しているのが、「これからの提供価値」の部分です。ここは、経営用語で言うとドメイン(誰に、何を、どのように)と言われるものです。なので、経営デザインシートというあたらしめなツールの様で本質としてはこれまでの経営支援場で使われていた基本的なセオリーとあまり変わらないと思っています。

では、このデザインシートの違いは何か?というと、この提供価値の部分を未来のこうありたいから考えていくことにあたります。従来のやり方では、今はこういう状態なのでこの先(3年後、5年後)はこうなるはずだと現実的(と思われる発想で)路線で物事を考えていくのですが、デザインシートを作る時には、過去にとらわれず自由な発想で考えてくださいと伝えています。なので、基本的なことは何も違いません。

これまでは人口増加が前提な社会がベースとなっていたため(これは教育も含めた社会システム全体が)一つのモノゴトに頑張って打ち込めばそれが徐々に認められ大きくなると言われていました。今ある大企業も最初は小さな商店から創業者が真面目に取り組んでやるべきことをやっていったから大きくなったと言われています。「頑張れば顧客は増える」の発想ですね。なので、これまで積み上げてきた経営資源が大切でしたし、基本積み上げたものは崩れないのが前提にありました。

しかし、今はそうではありません。これまで積み上げてきたものの、一夜にしてその大半が崩れてしまう状況がなん度も起きていますし、社会の変化も予測不能で早くなっています。こういう難しい環境の中で事業を続けていくためには、その流れに適応していく必要があります。

そのために、デザインシートではこれまでから未来を予測するのでは無く、こうしたいから今を考えましょうという発想に転換しているわけです。

この、「こうしたい」ことに、どの様な価値があるのかというのがキーストーン(要石)になってくるわけです。

この提供価値を考えるのが、なかなか難しいと感じています。実際にこれまで支援してきた会社や事例企業のものをひと解いていっても、提供価値が綺麗に抽出されることがすくなく、どちらかというと、たくんさん出てきて具体的に「〇〇のサービス」を提供すると手段になってしまったりとか、逆にふんわりとしすぎていて「社員、顧客、取引先に幸せを提供する」と抽象的すぎたりしてしまいます。

デザインシートが作られた当初は、「これまでにない発想が大切」というところを強調していたので、最初の頃はこの提供価値がうまくできないところはそもそもデザインシートの適用がマッチしないケースなのではとも思ったのですが、これまでと変わらない事業を続けていく場合でも、社会の流れに合わせることは必要で、すべてのケースで適用できると今は感じています。なので、提供価値がうまく出せていない場合はデザインシートの考え方がまだ経営者も支援者も理解できていない段階ということになると最近感じる様になりました。

やはり、提供価値が何かは、事業においてとても大切だと思います。